プロローグ……「八道州・七新都市構想」とは |
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『八道州・七新都市構想』に戻る 2011年の3月11日に起きた東日本大震災は、東京を始め首都圏に住む人々にも大変な恐怖と被害をもたらしました。長く続く大きな揺れの怖さ。転倒する家具などによりケガ人が続出し、一部には死者も出ました。さらに土地の液状化により家が傾いた地域もあり、交通がマヒすることにより東京を中心に500万人を越える帰宅困難者が生まれました。かつての阪神・淡路大震災では、大地震の被害をやや人ごとのように感じていた東京とその周辺の人たちも、大地震の怖さというものを身をもって感じたといえるでしょう。 「近い将来、東京を中心とした首都圏に直下型の大地震が起きる可能性がきわめて高い」という事実を首都圏の住民のみならず、日本という国が突きつけられています。いうまでもなく、東京には日本の政治・経済・文化の主要な部分が集中しています。そして日本の首都圏というのは世界的にみても、異常なほど人口が集中している地域です。その直下で震度6、いや、最近の研究では震度7の大地震が起きる可能性があるといわれていますが、その被害はまさに想像を絶するものといえるでしょう。約一千万人の帰宅困難者はこの前の地震の時のように徒歩で帰宅するというわけにはいきません。なにしろ、多くの住宅地で火災が発生して大火になり、火の海となっている地域も少なくないのです。かといって、その人たちが企業やビルに留まるといっても、提供できる水や食料は三日分程度でしょう。とてつもない数の被災者たちに、長期にわたって水・食料・生活用品、そして避難所を提供するなどということは不可能です。なにしろ、日本の政治・経済の中枢機能も同時被災してしまったわけですから。 大地震の際の都市の被害は、その規模が大きくなるほど加速度的に巨大なものになります。家屋の倒壊より火災が、火災より交通・電気・水道などのインフラの被害が、インフラの被害より経済活動の停滞などによる経済的被害が猛烈な勢いで広がります。東京の震度6の直下型地震による経済的被害は最悪のケースで100兆円を軽く越えるといわれていますが、震度7ではさらに大きくなるでしょう。それにもかかわらず、日本は政治・経済・文化機能の東京への一極集中を狂ったように進めてきました。まるで、「東京の大地震で皆で心中しましょう」とでもいうように。これは官僚たちが企業に対する自分たちの支配力を強めるために行ったということが最大の原因ですが、東京にある大企業の経営者たちも目を たとえば、アメリカのケースを見てください。ニューヨークやワシントンでは大きな地震はまず起きません。でも、私たちが知っているアメリカを代表する企業は、ニューヨークにはほとんどありませんよね。マイクロソフト、アップル、グーグル、インテル、IBMなどの本社は、みな地方の緑が豊かな場所にあります。また、メディア企業の多くは、ニューヨークとは反対側の西のロサンゼルスにあるハリウッドに集中しています。イギリスのロンドンやフランスのパリには政治・経済機能が集まっていますが、日本の首都圏とは比較にならないほど規模が小さく、また、地震もないのです。デパートなどの小売業やレジャー産業、金融・証券などのサービス業などはともかく、製造業やIT企業などは、災害に対してきわめて アメリカの優良企業のほとんどは、首都からはるかに離れた地方にある(写真はマイクロソフト本社) これに対して、東京に本社のある大企業は反論するかもしれません。 「そんなこといっても、大阪や名古屋に移転したって、東海・東南海・南海地震、そしてそれらが連動した南海トラフ地震に見舞われるかもしれないし、ほかに移転しても大地震の被害を受けるかもしれない」 「日本人は欧米のように自然の中で暮らすよりも都会の便利さをありがたがる。一社だけ地方へ移転したりしたら、人材の確保も難しいだろう」 「東京には、たとえば製造業においては、製品の金型などを作る下請けの会社が多数ある。そうした会社と企業の本社の距離が大きく離れると、製品開発にも支障をきたす」 「東京には経済団体の本部があって企業間の交流がしやすいし、国会や国の各省庁もあるので、政治家や官僚たちとの話し合いも行いやすく、各種の許認可を受けるにも便利である」 確かに、これらの理由は、企業の本社の東京からの移転を 新都市はすべての建物を免震構造にするなどして「震度7の大地震が来てもビクともしない完全防災都市」にします。また、かなりの規模の都市なので、デパートやショッピングセンター、レジャー施設や公共施設、病院などもあり、社員やその家族はその便利さを しかし、こうした都市を建設する費用はどうするのかと疑問を持つ人もいるでしょう。しかし、考えてみてください。東京にある大企業の本社の地価は坪1000万円とか2000万円、場所によっては数千万円もする所が少なくないのです。それに対し、新都市を建設する土地は、どこに建設するかで違いはありますが、平均して、整地費を含めて坪10万円程度です。その差を利用するのです。 この新都市建設は国家的な大事業なので、民間にまかせるというわけにはいきません。国が主体となって行います。国はまず新都市を建設する土地を買収します。成田空港のような「迷惑施設」と異なり、巨大な雇用を生み出し多額の税金を払ってくれる大企業が多数来るのですから、多くの地方は積極的に誘致するでしょう。この場合、地価の高騰を防ぐために地価凍結的な措置も必要になります。土地の買収が終わったら、近代的で美しく、緑も豊かで暮らしやすい「完全防災都市」を建設します。土地はすべて賃貸で、住宅地、オフィス地区、商業地区などで賃貸料は変わりますが、たとえば、オフィス地区では、土地の賃貸料は30年分前払いで坪100万円というようになります。年間にしたら坪3万円余り程度です。借地なので固定資産税はかかりません。国はそれで得た収入を土地の買収や道路、公共施設、公園などのインフラの整備にかかった費用に 建物は企業が東京の本社を売却して得た資金で建設してもいいし、大手不動産会社が建設して賃貸してもいいでしょう。ただ、建物のデザインや高さは国が基準を設けて、都市としての美観を 東京の大企業などがこの新都市に移転するメリットは、大地震の際などの会社のダメージの低減、社員やその家族の安全の確保、社員の通勤地獄からの解放、オフィスの賃貸料などの様々なコストの削減のほかに、新都市建設による経済活性効果により、景気が回復してそれぞれの会社の製品やサービスの売上げも伸びるということがあります。新都市建設というのは、きわめて乗数効果の高い大事業です。単に建設関係の巨大な需要が生じるというだけでなく、住宅建設により家具や電気製品なども売れ、企業の様々な設備や備品なども売れます。このような都市を日本中に数カ所建設すれば、その経済活性効果はとてつもないものになるでしょう。私はこれらの新都市を「新産業都市」と呼びたいと思います。 この新都市に移転する企業は製造業やIT企業が中心になると思いますが、私はメディア企業で構成される「日本のハリウッド」も建設すべきというアイデアも昔から持っています。すなわち、東京に集中している映画会社、放送会社、レコード会社や撮影所などを日本の地方に移転し、新都市を建設するという構想ですが、これによってメディア企業が受ける恩恵は、一般の企業以上のものといえましょう。たとえば、東京の放送会社では、テレビドラマの撮影は本社から遠く離れた郊外の撮影所で行われています。しかし、交通渋滞が日常 新都市の規模……人口20万~30万人(推定)。面積は40平方キロメートル程度。 近年、日本でもカジノを解禁すべきだという声がよく聞かれます。私もこれには賛成ですが、これを東京などの大都市に作ってはいけません。東京にカジノを建設するという考えは、アメリカのカジノはラスベガスではなくニューヨークに作るべきというのと同じです。アメリカでは地価がタダみたいに安い広大な砂漠の中にカジノを作ったからこそラスベガスという巨大なレジャー都市ができたのです。もし地価が高くて使える土地も限られているニューヨークにカジノを作ったとしても、きわてめ小規模なものしかできなかったでしょう。同じように、東京にカジノを作っても、小さなものしかできません。さらに東京一極集中を進めてしまいますし、東京の大地震の際は同時被災してしまいます。やはり新都市として「日本のラスベガス」を地方に建設すべきでしょう。 さて「新産業都市」「日本のハリウッド」「日本のラスベガス」を建設するのはいいとしても、東京にある政治機能はどうするのかと考える人は多いのではないでしょうか。というのも、東京にある機能の移転といえば、なんといっても昔から議論されている「首都機能移転」だからです。私は四十年も前からの首都移転論者ですから、もちろん首都機能移転には大賛成です。大地震の問題一つ考えても、東京で大地震が起きた場合、国会や政府の機能が同時被災してしまっては、被災者の救出作業もまともにできません。非常時には立川の施設に政府機能を移転することもできるようになっていますが、立川といっても東京の一部ですし、仮の施設でどれだけのことができるのか。やはり首都機能の移転というのは、防災対策としても、東京一極集中の是正のためにも絶対に行わなければならないことです。 ただ、新産業都市などと異なり、民間の企業が移転するわけではないので、巨額の税金がかかるのではないかと しかし、政府の機能が東京に残るにしろ、首都機能移転をするにしろ、新産業都市などを作ると、新都市と首都の距離が離れるため、各企業が省庁の許認可を得たりするのに不便と考える企業も多いと思います。したがって、道州制の導入による地方分権ということが、そのためにも必要となります。道州制を導入すれば、許認可などの多くは、各州の州庁所在地に行けばいいのですから。実際、近年道州制の導入が盛んに議論されていますが、経済の東京一極集中を温存したまま道州制を導入しようとしても必ず失敗します。というのも、道州制を導入するには各道州に独自の財源が必要となりますが、現在のままでは関東や近畿以外では、財源がきわめて乏しいからです。国の財源を無条件でよこすように言う人もいますが、税金を多く払っている大都市は納得しないでしょうし、地方も経済を活性化しようという意欲が乏しくなってしまいます。道州制を実現するためには、東京を始めとする大都市に集中する企業を日本全国に分散するしかありません。 すなわち、道州制の導入による地方分権を実現するためには、私の提案する新都市建設の案を組み合わせるしか方法がないということです。そしてその具体的な構想が「八道州・七新都市構想」なのです。あまりにもスケールが大きくて非現実的な構想のように思われる人も多くいると思いますが、様々な日本の抱える問題を論理的に突き詰めて考えていくと、それらをすべて解決へと導く妙案はこれしかないということがおわかりになるでしょう。すなわち、これにより内需の拡大、経済の活性が実現して国民は豊かになり、国の税収は増え、政府の借金も大幅に減ります。また、防災、地方分権、行革など国が抱える問題も解決に向かい、東京一極集中による地方の過疎、大都市の通勤地獄や交通渋滞、高い家賃などの住みにくさも緩和されます。まさに日本を救う超改革といえましょう。 なお、私はこの論文を1997年に執筆し、小泉内閣が発足した翌年の2002年にその時の政治・経済状況に合わせて加筆・訂正しました。そして今回さらに書き直そうかと思いましたが、今これを読み返してみると、ITバブル崩壊当時の経済状況などが思い出され、けっこう興味深く読めたしだいです。また、現在の経済状況は2002年当時と基本的には変わらない、というより私が予想したように当時よりさらにひどくなっているわけで、この改革の必要性については変わらないため、本文はあまり変更しませんでした。ただ、その後の政治・経済状況の変化などについては、文中の[ ]の中で説明することにします。 八道州・七新都市建設の提言1 (第一章 八道州・七新都市構想とは-その1) 八道州・七新都市建設の提言2 (第一章 八道州・七新都市構想とは-その2) 八道州・七新都市建設の提言3 (第二章 「新首都」と「新産業都市」) 八道州・七新都市建設の提言4 (第三章 「日本のラスベガス」と「日本のハリウッド」) 八道州・七新都市建設の提言5 (第四章 新都市建設の実際) 八道州・七新都市建設の提言(全文).pdf へのリンク 『八道州・七新都市構想』に戻る このページのトップに戻る |
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