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  私の選んだミュージカルナンバー、ベスト30(その4)
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 このページでは、次のベスト30のうち21~30のミュージカルナンバーと、そのナンバーの入っているミュージカル映画の解説をしています。番号と順位は関係ありません。
 〔1~10の解説は(その2)、11~20の解説は(その3)でしています〕
 関連ページ……『私の映画企画』「夢のミュージカル・コンサート」

私が選んだミュージカルナンバー、ベスト30
1.「サウンド・オブ・ミュージック」(『サウンド・オブ・ミュージック』)
2.「私のお気に入り」(『サウンド・オブ・ミュージック』)
3.「エーデルワイス」(『サウンド・オブ・ミュージック』)
4.「トゥナイト」(『ウエストサイド物語』)
5.「マリア」(『ウエストサイド物語』)
6.「愛はどこに」(『オリバー!』)
7.「気楽にやれよ」(『オリバー!』)
8.「買ってくださいな」(『オリバー!』)
9.「踊り明かそう」(『マイ・フェア・レディ』)
10.「君住む街角」(『マイ・フェア・レディ』)
11.「乙女のよろこび」(『キャメロット』)
12.「ひそかな想い(筆者訳)」(『キャメロット』)
13.「もしもあなたと別れるなら」(『キャメロット』)
14.「シャル・ウィ・ダンス」(『王様と私』)
15.「ハロー・ヤング・ラバーズ」(『王様と私』)
16.「アイ・ハブ・ドリームド」(『王様と私』)
17.「バリ・ハイ」(『南太平洋』)
18.「魅惑の宵」(『南太平洋』)
19.「もしもあなたを愛したら」(『回転木馬』)
20.「ハロー・ドーリー!」(『ハロー・ドーリー!』)
21.「ピープル」(『ファニー・ガール』)
22.「サンライズ・サンセット」(『屋根の上のバイオリン弾き』)
23.「見果てぬ夢」(『ラ・マンチャの男』)
24.「リビング・イン・ザ・シャドウ」(『ビクター/ビクトリア』)
25.「ソー・イン・ラブ」(『キス・ミー・ケイト』)
26.「虹の彼方に」(『オズの魔法使』)
27.「雨に唄えば」(『雨に唄えば』)
28.「ショウほど素敵な商売はない」(『アニーよ銃を取れ』)
29.「2ペンスを鳩に」(『メリー・ポピンズ』)
30.「メモリー」(『キャッツ』)

解説
 最初に映画の説明を簡単にして、そのあとミュージカルナンバー、および映画について解説します。

○『ファニー・ガール』(1968年)
監督 ウィリアム・ワイラー
主演 バーブラ・ストライサンド、オマー・シャリフ
作曲 ジュール・スタイン  作詞 ボブ・メリル
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。ファニー・ブライスというブロードウェーのミュージカルスターの伝記的ミュージカル。舞台も映画も個性的な風貌(ふうぼう)のバーブラ・ストライサンドが演じ、この映画で彼女はアカデミー主演女優賞を受賞(得票数がキャサリーン・ヘップバーンと同じだったため、二人が受賞するという前代(ぜんだい)未聞(みもん)のことが起きた)。バーブラはそれ以後、大スターとなり、アメリカを代表する大歌手となりました。

21.「ピープル」(『ファニー・ガール』)
 『ベン・ハー』『ローマの休日』を監督したウィリアム・ワイラーは、アメリカを代表する大監督です。彼は『サウンド・オブ・ミュージック』の監督を一度は引き受け、ロケ地のオーストリアへ取材旅行まで行ったものの、結局降板してしまい、ロバート・ワイズが監督をすることになりました。しかし、『サウンド・オブ・ミュージック』は質的にも興行的にも、大成功したわけです。それによってワイラーが監督を降りたことを後悔したかどうかは知りませんが、彼はこの『ファニー・ガール』で初めてミュージカル映画のメガホンを取ることになりました。
 ウィリアム・ワイラーというのは三回もアカデミー監督賞を受賞していて、またノミネートは数えきれないくらいされています。この映画も例によってアカデミー作品賞、監督賞にノミネートされたのですが、私にとってはかなり退屈というか、歌のシーンが気分が乗れない、楽しくない作品で、なぜノミネートされたのかよくわかりませんでした。バーブラのミュージカル映画といえば、やはり作品賞にノミネートされた『ハロー・ドーリー!』がありますが、このほうがミュージカルシーン自体ははるかに楽しい。
 ただ、この『ファニー・ガール』で最も有名なナンバーである「ピープル」は本当に素晴らしい歌です。しかし、近年はこの歌を知っている人は少ないかもしれません。バーブラの熱唱があまりにも見事なうえ、誰でも気楽に歌えるという歌ではないので、広がりに欠け、メロディーを耳にすることが少ないせいではないでしょうか。


○『屋根の上のバイオリン弾き』(1971年)
監督 ノーマン・ジュイソン
主演 トポル
作曲 ジェリー・ボック  作詞 シェルダン・ハーニック
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。ロシアのユダヤ人の村における一家の物語。日本では、森繁久弥主演の舞台がロングランされたので有名になったミュージカルです。

22.「サンライズ・サンセット」(『屋根の上のバイオリン弾き』)
 当時、このミュージカルは森繁久弥主演の舞台によりよく知られており、また新聞の批評にも『ウエストサイド物語』に匹敵する傑作などと出ていたので、かなり期待して見たのですが、思ったほど面白い映画ではありませんでした。ロシア政府によるユダヤ人迫害といった社会的背景はあるものの、基本的にはホームドラマであり、やや冗漫(じょうまん)な印象を受けました。印象に残るミュージカルナンバーも有名な「サンライズ・サンセット」ぐらい。しかし、アカデミー作品賞などにノミネートされており、こういう雰囲気のミュージカルが好きな人も多いのだと思います。


○『ラ・マンチャの男』(1968年)
監督 アーサー・ヒラー
主演 ピーター・オトゥール、ソフィア・ローレン
作曲 ジョー・ダリオン  作詞 ミッチ・リー
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。セルバンテスの『ドン・キホーテ』を元にミュージカルにしたもの。日本では松本幸四郎主演の舞台で有名。

23.「見果てぬ夢」(『ラ・マンチャの男』)
 世界の代表的な文学というのは、私の経験では、読み始めてしばらくは面白くなくても、次第にそのストーリーにぐいぐいと引き込まれ、内容に圧倒されてしまうということが多かったです。しかし、スペインの文豪セルバンテスが書いた『ドン・キホーテ』は、退屈でしかたがなく、私にとってはつまらない小説でした。もっとも、このミュージカル映画が公開された頃は私は高校生でしたが、この原作はまだ読んでおらず、単に内容に興味がなかったので見なかったしだいです。評論家の評価も(かんば)しくなかったですし。なお、当時この映画を見た私の友人は、映画より松本幸四郎の舞台のほうがよかったと言ってました(ちなみにその友人は、現在創作バレエの監督をしています)。
 私がこのミュージカル映画を見たのは、何年か前にBSで放映したときです。でも、あまり面白くなくて、録画した多くのシーンを早送りしてしまいました。しかし、ミュージカルナンバーの「見果てぬ夢」の録画部分だけは保存しておいて何回もくり返し見たしだいです。この歌は本当に素晴らしい。曲もいいですが、この歌詞が私の生き方と重なり、聴いていて涙が出そうになります。ちなみに、この映画で主役を演じたピーター・オトゥールは、彼の代表作の『アラビアのロレンス』の中でも歌を歌っていて美声の持ち主ですが、『チップス先生さようなら』というミュージカル映画にも主演しています。


○『ビクター/ビクトリア』(1982年)
監督 ブレーク・エドワーズ
主演 ジュリー・アンドリュース
作曲 フランク・ワイルドホーン  作詞 レスリー・ブリッカス
 ジュリー・アンドリュースが夫で映画監督のブレーク・エドワーズと組んで作ったオリジナルのミュージカル映画です。ジュリー・アンドリュースは、この映画で『サウンド・オブ・ミュージック』以来となるアカデミー主演女優賞にノミネートされました。その後、この映画はブロードウェーで舞台ミュージカルとなりましたが、主演と演出は映画と同じジュリーとエドワーズの夫妻。ジュリーはブロードウェーに『キャメロット』以来三十数年ぶりに戻ったわけです。
 なかなか評判のいいミュージカルのようで、ジュリー・アンドリュースファンの私としては、本来なら夢中で見てもいい作品なのですが、じつは私は女性が男装したり男性が女装したりするのを見るのが生理的にダメなんです(だから、宝塚歌劇も歌舞伎も見る気はしない)。ですからこの映画も、ビデオを早送りしながらところどころを見たにとどまりました。

24.「リビング・イン・ザ・シャドウ」(『ビクター/ビクトリア』)
 ジュリー・アンドリュースの『クラシック・ジュリー、クラシック・ブロードウェー』という輸入CDがありますが、この中に『ビクター/ビクトリア』の中から二曲が入っています。一曲はこのミュージカルのほとんどの歌を作曲したヘンリー・マンシーニの「クレージー・ワールド」という歌。これもいい曲ですが、このミュージカルで二曲だけ作曲しているフランク・ワイルドホーンの『リビング・イン・ザ・シャドウ』はさらにいい。映画のほうはサラッとしか見なかった私は、「へえー、このミュージカルにこんな名曲が入っていたんだ」と驚いたしだいです。フランク・ワイルドホーンというのはミュージカルの『ジキル&ハイド』の作曲をした人で、宝塚歌劇の製作にも加わった関係で、同劇団の女優の和央(わお)ようかと婚約したということです。


○『キス・ミー・ケイト』(1953年)
監督 ジョージ・シドニー
主演 キャスリン・グレイソン、ハワード・キール
作曲・作詞 コール・ポーター
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。シェークスピアの『じゃじゃ馬ならし』のミュージカル化に伴うドラマを描いたコメディ。

25.「ソー・イン・ラブ」(『キス・ミー・ケイト』)
 この映画は私が生まれる前年に製作されていますが、当時日本では公開されませんでした。私はこの映画は見ていませんが、このミュージカルを代表する曲の「ソー・イン・ラブ」は何回も耳にしていました。というのも、この曲はテレビ朝日系の『日曜洋画劇場』のラストに、クラシック風にアレンジされたものが、2003年まで長年にわたって毎週流されていたからです。もっとも、いい曲だと思いながらも、番組のクレジットに曲名が表示されなかったため、長い間、何という曲かはわかりませんでした。視聴者の中には、私と同じ思いをした人も多かったようです。しかし、のちに買ったジュリー・アンドリュースのレコードの中にこの歌が収録されてして、ようやくこのミュージカルの歌だということがわかりました。
 作詞・作曲のコール・ポーターは、ジョージ・ガーシュインとともに、初期のブロードウェーのミュージカルの大御所(おおごしょ)です。現在この映画のDVDも販売されていますが、この歌を聴くには、もし手に入るのでしたら、ジュリー・アンドリュースのCDによるものがベストだと思います。ただ、厳密にいうと、二つのバージョンがあるので、『サウンド・オブ・ミュージック』の編曲も担当したアーウィン・コスタルの編曲・指揮によるもののほうがおすすめです。


○『オズの魔法使』(1939年)
監督 ビクター・フレミング
主演 ジュディー・ガーランド
作曲 ハロルド・アーレン  作詞 エドガー・イップ・ハーバーグ
 ファンタジー小説を映画化したハリウッドオリジナルのミュージカルファンタジー。ミュージカル女優のライザ・ミネリの母親で、当時まだ子役だったジュディー・ガーランドが主演。彼女が歌う「虹の彼方に」は大ヒットしてスタンダードナンバーになりました。

26.「虹の彼方(かなた)に」(『オズの魔法使』)
 このミュージカルファンタジーは、アメリカでは『雨に唄えば』と共にアメリカ映画史上のベストテンに入っていたりして、異常に高く評価されています。しかし、日本で好きなミュージカルのアンケートを取ったとしても、ほとんど名前は出てこないでしょう。ミュージカルナンバーの「虹の彼方に」は名歌ですけど。
 私は優れたファンタジー映画というのは、大人が見ても楽しくて夢中になれるようなものでなくてはならないと考えています。その点、この映画は小さな子供が見たら面白いのでしょうけど、大人が見たらいささかバカらしく感じるのではないかと思います。しかし、アメリカ人はそうではないようですが。
 ところで、この映画の監督のビクター・フレミングというのは『風と共に去りぬ』の監督としても有名なんですけど、それにしては名監督としてその名が映画史に残っているということが全くないんですね。まあ、『風と共に去りぬ』は途中で解任されたジョージ・キューカーと実質的には共同監督でしたし、この『オズの魔法使』も一部はキューカーが撮影したといいます。キューカーが女性の演技指導に優れていたのと対照的に、この監督は男優の指導に定評があり、『風と共に去りぬ』では主役を演じたクラーク・ゲーブルが監督を彼と交代するように望んだということです。ただ、出演した女優の話では、ビクター・フレミングという監督は才能はあるけど性格は悪かったと公言していました。


○『雨に唄えば』(1952年)
監督 スタンリー・ドーネン、ジーン・ケリー
主演 ジーン・ケリー、デビー・レイノルズ
作曲 ナシオ・ハーブ・ブラウン  作詞 アーサー・フリード
 1940年代~1950年代にかけて大量に作られたMGMミュージカルの中で最も優れた作品の一つ。映画がサイレントからトーキーに変わった時代を背景に、映画製作の現場を描くコメディ。

27.「雨に唄えば」(『雨に唄えば』)
 私が中学の頃、テレビではMGMミュージカルを大量に放映してたので、私は片っ端からそれらを見ていました。それらの中にはあまり面白くない作品も少なくなかったのですが、このミュージカル映画は最高でした。当時はモノクロの小さなテレビでしたけど、とにかく楽しかった。ただ、「私が理解できない名作映画」でも書きましたが、『サウンド・オブ・ミュージック』や『ウエストサイド物語』がフランス料理のフルコースとするなら、この『雨に唄えば』は、町の定食屋のおいしいコロッケ定食という感じです。アメリカではこの映画をミュージカル映画の最高傑作と評価する人も多いようですが、やはり1960年代の大傑作とは比較になりません。
 この映画の代表的な歌である「雨に唄えば」は、ジーン・ケリーが歌う場面があまりにも有名なためオリジナル曲だと思ってましたが、調べてみたら意外にも、違うということがわかりました。それどころか、この映画の歌のほとんどは過去の歌の寄せ集めで、オリジナルではないということです。それでもこんな傑作ミュージカル映画ができちゃうんですね。


○『アニーよ銃をとれ』(1950年)
監督 ジョージ・シドニー
主演 ベティ・ハットン、ハワード・キール
作曲・作詞 アービング・バーリン
 ブロードウェーのミュージカル演劇の映画化。射撃競技などを見せるショーで活躍した実在の女性をモデルにした恋物語。

28.「ショウほど素敵な商売はない」(『アニーよ銃を取れ』)
 この映画も『雨に唄えば』と同様、十代のときにテレビで見たのですが、なかなか面白いミュージカル映画だったと記憶しています。このミュージカルの代表曲である「ショウほど素敵な商売はない」は当時のミュージカル映画を代表するスタンダードナンバーであり、のちにこの歌をモチーフにした同名のミュージカル映画もできています。


○『メリー・ポピンズ』(1964年)
監督 ジョージ・スティーブンス
主演 ジュリー・アンドリュース、ディック・バン・ダイク
作曲・作詞 シャーマン兄弟
 ウォルト・ディズニーが製作したミュージカルファンタジー。ブロードウェーの舞台で『マイ・フェア・レディ』『キャメロット』の主役を演じたジュリー・アンドリュースは、この作品で映画デビューし、アカデミー主演女優賞を受賞した。

29.「2ペンスを鳩に」(『メリー・ポピンズ』)
 このミュージカル映画の音楽に関していえば、ジュリー・アンドリュースの歌は素晴らしいし、有名な「チム・チム・チェリー」や、この「2ペンスを鳩に」のように、優れたナンバーがいくつもあります。しかし、この作品自体は、なぜこんなに高く評価されているのか、私には全く理解できません。とにかく、これといった芯の通ったストーリーはなく、退屈。私は高校生のとき、この映画が上映された年のベストテンで、この映画が『サウンド・オブ・ミュージック』より高く評価されていたのを知り、「映画評論家というのは頭がおかしい」と思ったものです。ミュージカルファンタジーとしては、この映画と同じシャーマン兄弟の作詩・作曲による『チキ・チキ・バン・バン』のほうが10倍面白いし、日本の評論家には、けなされてたけど、『ドリトル先生不思議な旅』は20倍面白いというのが私の感想です。
 ただ、この映画は、このあと製作されたミュージカル映画の最高傑作である『サウンド・オブ・ミュージック』にジュリー・アンドリュースが主演したことについて重要な役割を(にな)いました。『サウンド・オブ・ミュージック』の脚本家のアーネスト・リーマンは、当初からこの映画の主役にジュリー・アンドリュースを起用しようと考えていました。しかし、監督のロバート・ワイズはこの配役に難色を示したのです。確かにジュリー・アンドリュースはブロードウェーの舞台では新進のミュージカルスターでしたが、映画デビュー作の『メリー・ポピンズ』はまだ公開されてなく、映画俳優としては未知数だったからです。そこで二人は何とか未公開の『メリー・ポピンズ』のフィルムを見れないかと考えたのですが、『メリー・ポピンズ』はウォルト・ディズニープロ、『サウンド・オブ・ミュージック』は20世紀フォックスの製作ということで、通常はライバル会社のために未公開のフィルムを見せるということは考えられません。しかし、ウォルト・ディズニーは二人に『メリー・ポピンズ』を見ることを許可します。おそらくジュリー・アンドリュースのためを思ってのことでしょう。
 監督のロバート・ワイズと脚本家のアーネスト・リーマンは、ディズニープロの試写室に入り、『メリー・ポピンズ』の未公開フィルムを見始めました。しかし、しばらくすると、二人はあわてて試写室から飛び出したということです。ワイズ監督(いわ)く「早く彼女と契約しよう。さもないとほかの映画会社に取られちゃうよ」


30.「メモリー」(『キャッツ』)
 『キャッツ』は舞台ミュージカルで、今回あげたミュージカルの中では唯一(ゆいいつ)映画化されていません。私は舞台は見ていませんが、出演者はすべて猫で、これといったストーリーのない異色のミュージカルということです。しかし、有名なミュージカルナンバーの「メモリー」はいい曲なので、ベスト30に入れておきました。作曲は『オペラ座の怪人』などのアンドリュー・ロイド・ウェバー、作詞はT・Sエリオット。
 ところで、この「メモリー」をのぞけば、このベスト30に『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』などの近年のミュージカルの歌が入っていないことに疑問を持つ人もいるでしょう。しかし、これらのミュージカルのファンの人たちは怒るかもしれませんが、私に言わせれば、近年のミュージカルの音楽と、ミュージカルの黄金時代に作られたミュージカルの音楽とでは、そのレベルが全く違うのです。たとえば、『レ・ミゼラブル』を代表する歌とされる「民衆の歌」でも、『サウンド・オブ・ミュージック』の「すべての山に登れ」には、はるかに及びません。しかし、「すべての山に登れ」は決して『サウンド・オブ・ミュージック』で最高の歌というわけではないのです。『サウンド・オブ・ミュージック』の作曲家のリチャード・ロジャースや『マイ・フェア・レディ』を作曲したフレデリック・ロウは、美しいメロディを生み出す天才でした。それに較べれば、近年のミュージカルの作曲家たちは「普通の作曲家」としか私には思えないのです。


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